🗓️ 最終更新日: 2025-06-25
カティネラ属は腐生性の盤菌の一グループで、陸上の材の下面という微環境に特化した菌類です。一見すると典型的な椀状の盤菌ですが、成熟時にゲル状の皮層を形成し、節足動物を介してゼラチン質に包まれた胞子を散布するという独特な繁殖戦略を持ちます。
カティネラ属(Catinella)は子嚢菌門・チャワンタケ亜門・クロイボタケ綱・カティネラ目・カティネラ科に属します。
1907年の設立以来、約100年間にわたってビョウタケ目に分類されていましたが、分子系統解析によりクロイボタケ綱に属することが判明し(Greif et al., 2007)、その後独立の目と科が新設されました(Hongsanan et al., 2020)。現在のところ、クロイボタケ綱内の他の目との系統関係は不明確とされています。
属の基準種で、本記事執筆時点で唯一iNatの観察記録がある種です。1783年に記載された歴史のある種ですが、全世界で約200件しか記録がないことからも、稀な種と考えられます。子実体は美しいオリーブ色で、明瞭な黄色の縁があるので、一目で分かることが多いです。北半球に広く分布し、ブナ科の材に発生する傾向があります。
カティネラ属は腐朽の進んだ広葉樹材の分解者として重要な役割を果たしています。発生環境は材の下面や空洞部という「スキマ」環境で、湿度が高く空気の循環が制限された場所に限定されます。
この属の最も興味深い特徴は、風散布に依存しない胞子散布機構です。成熟した子実体の表面にゲル状の皮層を形成し、トビムシ、ワラジムシ、ヤスデ、ムカデ、ザトウムシなどの節足動物が胞子塊を体表に付着させて運搬するといいます。この適応により、風の当たらない閉鎖的な環境でも効率的な胞子散布を実現しています。
同定のコツ:オリーブ色の平らな子実体が黄色に縁取られるという特徴的な外観をしているので、新鮮な状態であれば一目で分かると思います。ただし老成すると縁部は黒く不明瞭になります。KOH水溶液を滴下すると暗褐色に呈色するのも観察するとよいでしょう。顕微鏡では、歪んだ舟形の胞子が子嚢内部で1列に並ぶのをチェックしましょう!
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