🗓️ 最終更新日: 2025-05-30
- 子嚢菌門で最大かつ最も多様性に富む綱で、地球上のほぼ全ての生態系に分布します🌍
- かつて小房子嚢菌綱(Loculoascomycetes)とよばれたグループの多くが本綱に該当します🏗️
- 子嚢は二重壁(bitunicate)で、内壁が伸長して外壁を破る裂開二重壁型(fissitunicate)です📦
- 偽子嚢殻(pseudothecia)と呼ばれるフラスコ状の子実体を形成することが多いです🍶
- 偽側糸(pseudoparaphyses)の有無が亜綱レベルの重要な識別点となります🔍
- 子嚢胞子の形状・色・隔壁数は属・種レベルの同定に不可欠です🎨
- 無性世代では多様な分生子殻や分生子柄を形成し、分生子の特徴も重要です✨
クロイボタケ綱(Dothideomycetes)は子嚢菌門の中で最大の綱で、植物病原菌、分解者、内生菌(エンドファイト)、稀には地衣類など、驚くほど多様な生活様式を示します。最大の特徴は「小室」を形成する「小房子嚢性(ascolocular)」とよばれる発達様式(「層生子嚢性[ascohymenial]」と対比される)と、二重壁を持つ裂開二重壁型の子嚢です。内壁が伸長して外壁を破り、まるでびっくり箱のように胞子を放出する様子は独特!地球上のほぼ全ての生態系で重要な役割を果たしています。
クロイボタケ綱は子嚢菌門(Ascomycota)・チャワンタケ亜門(Pezizomycotina)に属し、地衣形成性のホシゴケ綱(Arthoniomycetes)と姉妹群を形成します。
綱内は大きく2つの亜綱に分かれます:クロイボタケ亜綱(Dothideomycetidae)は偽側糸を欠き、プレオスポラ亜綱(Pleosporomycetidae)は偽側糸を持つという明確な違いがあります。最新の5遺伝子(nucSSU、nucLSU rDNA、TEF1、RPB1、RPB2)を用いた包括的な系統解析により、綱全体の系統関係がより明確になってきました。
偽側糸(pseudoparaphyses)を欠くグループで、ドチデア目(Dothideales)、カプノディウム目(Capnodiales)、ミリアンギウム目(Myriangiales)などの目を含みます。子実層間組織の構造がプレオスポラ亜綱との決定的な違いとなっています。多くの植物病原菌や内生菌を含む重要な亜綱です。
偽側糸(pseudoparaphyses)を持つグループで、プレオスポラ目(Pleosporales)、ヒステリウム目(Hysteriales)、ミティリニディオン目(Mytilinidiales)などの目を含みます。偽側糸は頂部から底部に伸びる菌糸で、子実層の構造維持に重要な役割を果たします。水生菌類のヤーヌラ目(Jahnulales)もこの亜綱に含まれることが分子系統解析で判明しました。
分解者、植物・動物・人間の病原菌など多様な生活様式を示します。代表的な科にヴェントゥリア科(Venturiaceae)とシンポヴェントゥリア科(Sympoventuriaceae)があり、世界的には最もiNat観察記録が多い目(約2万件)ですが、日本からの報告は皆無に近いです…。実はiNatの観察記録のほとんど(約1万8千件)がサクラやスモモに病気を起こして特徴的な瘤状になる単一の種、アピオスポリナ・モルボサ(Apiosporina morbosa)なんです。分生子の配列(単生か鎖生か)や分生子形成様式が分類学的に重要です。祖先的には分解者で、後に植物病原菌の生活様式を獲得したと考えられています。
主に木本植物の内生菌または病原菌として見られる重要なグループ。現在6つの科(Aplosporellaceae、Botryosphaeriaceae、Melanopsaceae、Phyllostictaceae、Planistromellaceae、Saccharataceae)が認められています。分生子の形態、色、隔壁の有無などが分類上重要ですが、DNA配列による同定が必須とされています。野外で簡単に認識できるのは、フィロスティクタ属(Phyllosticta)の中でもツタやマンリョウに特有の病気を起こす種くらいでしょうか…。
主に熱帯に分布する地衣類グループで、樹皮上に生育する痂状地衣が大半です。ポリコッカム科(Polycoccaceae)とチクビゴケ科の2科が含まれています。子嚢の内部構造、子座、子嚢胞子の形態などが分類学的に重要。子嚢は通常裂開二重壁型で、ゼラチン状マトリックス内に枝分かれした側糸を持ちます。
クロイボタケ綱は生態系において極めて重要な役割を果たしています。分解者として枯死植物体や腐植質を分解し、炭素循環を含む栄養循環に貢献。セルロースやリグニンなどの難分解性物質も分解できる強力な酵素系を持っています。
生活様式は驚くほど多様で、植物病原菌として重要農作物の病害を引き起こすもの、内生菌として植物組織内に無症状で生息するもの、地衣類として藻類と共生関係を形成するもの、さらには動物や人間の日和見病原菌となるものまで含まれます。最新のゲノム研究により、遺伝子ファミリーの拡大・縮小パターンから生態的ニッチを高精度で予測できるようになってきました。
実用的な同定の流れ:現実的には、野外で特定の植物に特徴的な病害を引き起こす種を個別に認識するのが簡単ですが…。体系的に取り組みたい場合には、①まず子実体が偽子嚢殻(pseudothecia)かを確認→②顕微鏡で子嚢が二重壁(bitunicate)であることを確認→③偽側糸の有無で亜綱を判定→④子嚢胞子の形状・色・隔壁数を観察→⑤無性世代があれば分生子の特徴も記録。ただし、正確な同定にはITS領域などのDNA配列データが不可欠です。形態的に類似した種でも遺伝的に異なる隠蔽種が多く報告されているため、分子データとの併用が推奨されます。
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。