🗓️ 最終更新日: 2025-05-30
- いわゆる黒カビの代表的な属。野外では特に枯れた草本にしばしば見られます!
- 似た属があるので属レベルの同定もいまいち自信が持てませんが、冠状の分生子形成部位が属の決定的な識別形質とされています👑
- 暗色の分生子が求頂的に鎖状に形成される、つまり若い分生子ほど分生子鎖の先端にあります🔗
- 3つの主要複合種:分生子が平滑なC. cladosporioides、疣状のC. herbarum、球形のC. sphaerospermumに大別されます✨
- 分生子表面の装飾パターン(平滑・疣状など)が複合種の重要な識別点です🔍
- 多様な環境に適応し、乾燥耐性・塩分耐性・低温耐性を持つ種があります🌡️
- 確実な種同定には分子系統解析が必須で、形態だけでは限界があります🧬
- 主に植物病原菌・腐生菌として知られていますが、アレルゲンとして医学的にも重要な属です⚠️
クラドスポリウム属は環境中で最も普遍的に存在する暗色分生子菌の代表格で、現在169種が認識されています。特徴的な冠状型の分生子形成部位を持ちます。空気中の胞子として広く分布し、植物病原菌・腐生菌・アレルゲンとして多方面で重要です。分子系統解析により大幅な再分類が行われ、3つの主要複合種に整理されました。
クラドスポリウム属は子嚢菌門・クロイボタケ綱・カプノディウム目・クラドスポリウム科に属し、有性世代はDavidiella属として知られ、以前はMycosphaerella科に含まれていましたが、分子系統解析により独立した科(クラドスポリウム科=ダヴィディエラ科)を形成することが判明しました。
2012年の包括的研究では、Cladosporium s. lat.に割り当てられた993の学名のうち、169種のみが狭義のCladosporium属菌として認識されました。多遺伝子座解析(ITS、D1/D2、EF-1α、actin)により、従来の形態分類では見えなかった隠蔽種の存在が次々と明らかになり、現在も新種の発見が続いています。
最も一般的な複合種で、平滑な表面の分生子が特徴です。代表種のC. cladosporioidesは世界中の幅広い基質に発生する腐生菌で、-10°Cまでの低温でも生育可能。オリーブ灰色~暗緑色のコロニーを形成し、規則的で毛羽立ったの白色の気生菌糸を持ちます。分生子は小型で単細胞、レモン形で最大10個の鎖を形成します。
属の基準種C. herbarumを含む複合種で、分生子表面の疣状装飾が決定的な識別点です。C. herbarumは空中で最も一般的な胞子として知られ、オリーブ褐色~黒褐色のビロード状コロニーを形成。分生子柄は直立して節状に膨大し、屈曲した特徴的な形状を示します。C. macrocarpumやC. iridis(アヤメ科の病原菌)も含まれます。
球形~類球形の小型分生子(最大5.5μm)が特徴で、他の2つの複合種と明確に区別されます。代表種C. sphaerospermumは高塩分耐性(12-17% NaCl)を持ち、10%グルコース培地でも良好に成長。X線耐性や放射線栄養性も報告されている特殊な生理的特性を持つ種群です。分生子は通常隔壁を持ちません。
クラドスポリウム属は極めて多様な生態を示し、土壌、有機物、植物(生体または枯死組織)、室内・屋外環境、さらには海洋環境や極地まで分布しています。多くは広範囲の基質に生育する非特異的腐生菌ですが、C. iridisのようにアヤメ科植物に特異的な種や、C. exobasidiiのように他の菌類に重複寄生する種も存在します。
環境適応能力が極めて高く、乾燥耐性(水分活性0.86-0.88でも成長)、塩分耐性、低温耐性(-10°C)、pH耐性(pH 4.4-6)など多様な環境条件に対応可能です。空中分散により世界規模で分布し、夏~秋には特に空中からサンプリングされる胞子の数が多くなるといいます。
実用的同定の流れ:野外では草本や果実などに独特のオリーブ色を帯びたコロニーを形成し、慣れればそれだけで属まで当たりがつけられることも。分生子鎖は壊れやすく、スライドを作成するとたいていバラバラになってしまいます…高倍率の実体顕微鏡で、壊れる前の様子を観察するとよいでしょう。分生子形成部位の冠状の形と、枝状分生子の存在を確かめたのち、分生子表面の装飾を観察(平滑=cladosporioides複合種、疣状=herbarum複合種、球形小型=sphaerospermum複合種)。できれば寒天培地で培養してコロニーの様子を観察してみてください。種レベルの確実な同定には多遺伝子座解析(ITS、nrLSU、EF-1α、actinなど)が必要です。ITSだけじゃ足りないかも…。
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CI下限 < 1)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が1を超える場合、統計的に有意な差があることを示します。