🗓️ 最終更新日: 2025-05-30
ハエカビ目はほとんどが昆虫病原菌からなる大きなグループです。宿主昆虫の体内で増殖し、死後に胞子を射出して次の宿主へと感染を広げます。近年の分子系統解析により、従来の接合菌門から独立したハエカビ門として再分類され、分類学上の大きな変革を経験しました。分生子の形態や宿主特異性が属の識別に重要で、多くの種は人工培地での培養が困難な絶対寄生性を示します。
ハエカビ目(Entomophthorales)は、ハエカビ門(Entomophthoromycota)・ハエカビ綱(Entomophthoromycetes)に属します。2000年代の分子系統解析により、従来の接合菌門(Zygomycota)から独立した門として再分類されました。陸上菌類の初期に分岐した系統の一つです。
現在、ハエカビ門には3つの綱(ハエカビ綱、バシディオボルス綱、ネオジギテス綱)が認識されています。ハエカビ目内では、ハエカビ科が種数最多で、iNat観察記録数も圧倒的。さらにハエカビ亜科とエリニア亜科の2亜科に分けられます。核rDNAやミトコンドリアDNA解析により、多核菌糸や配偶子嚢融合による有性生殖といった共通の形質が確認されています。
本目で最も有名な属で、鐘形の多核一次分生子が最大の特徴です。その名の通り、主にハエなどの双翅目昆虫に寄生し、宿主を高所に誘導してから死亡させる「ゾンビフライ」現象で知られています。リゾイドを形成せず、胞子は強制射出されます。宿主特異性が極めて高く、21種が認識されています。
リゾイド(根状の菌糸)を形成するのが特徴で、Entomophthora属との重要な識別点となります。分生子は変異性があり、単核または複数核を持ちます。多様な昆虫を宿主とし、二次分生子を形成する能力もあります。無性生殖が主な繁殖方法で、比較的宿主範囲が広いです。
分生子が腹側扁平、背側凸型の非対称形という独特な形状を持ち、側面から見ると腹側に向かって曲がって見えます。主にアブラムシなどの半翅目昆虫に寄生し、宿主特異性が高いです。Pandora neoaphidisが代表種として世界中に分布しています。リゾイドも形成します。
アンシリステス科(Ancylistaceae)に属し、球形~洋梨形の分生子を単一の分枝しない分生子柄から形成します。多くは腐生性ですが、一部は昆虫病原性を示します。Conidiobolus coronatusなど一部の種は人間や他の哺乳類にも感染(コニディオボルス症)する能力があり、特に侵襲性のものは致死率が高い新興感染症として医学的にも重要です。絶対寄生性が基本の他属と異なり、多くの種は培養可能です。
ハエカビ目の菌類は主に昆虫病原性で、特定の宿主昆虫に高度に特化しています。多くの種は絶対寄生性で人工培地での培養が困難ですが、Conidiobolus属の一部は腐生性で土壌中に生息します。宿主操作能力は特に注目される特徴で、感染した昆虫を胞子散布に有利な高所に誘導してから死亡させるこの性質は、進化の過程で高度に特殊化したものと考えられています。
地理的分布は世界中に及び、熱帯から温帯の湿潤環境で特に多様性が高いです。Conidiobolus属やBasidiobolus属は熱帯・亜熱帯に多く、Entomophthora属やZoophthora属は温帯地域でも頻繁に観察されます。宿主の分布に依存して地理的分布が制限される場合もあり、共進化の結果として高い宿主特異性を獲得しています。
同定の実用的ステップ:①宿主昆虫の情報を記録→②分生子の形状を顕微鏡観察(鐘形・球形・非対称形など)→③リゾイドや休眠胞子の有無を確認→④可能なら核の数と大きさを観察→⑤可能なら分子データ(ITS領域など)を取得。宿主昆虫がいそうな場所を探しましょう!多くの種は培養困難なため、宿主上での直接観察が重要です!
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。