🗓️ 最終更新日: 2025-05-25
- 本綱の約8,000種以上のうち約90%がサビキン目に属し、主にさび病を引き起こす重要な農作物の病原菌を含みます⚠️
- 透過型電子顕微鏡で見られる中央に孔を持つ単純な隔壁構造が特徴的で、多くの種で隔壁孔に「滑車形(pulley-wheel-shaped)」のプラグが観察されます🔍
- 生活環の主要段階は重相(二核相)で、クランプを欠く菌糸を形成します
- サビキン目では5つの胞子段階(冬胞子・担子胞子・精子・さび胞子・夏胞子)を持つ複雑な生活環が特徴です✨
- 異種寄生性という性質を持つ種は2つの異なる宿主植物を必要とします🌿
- 感染部位にさび色の胞子堆を形成し、円形・楕円形・線状など種特有のパターンを示します
- 絶対的寄生菌として、生きた宿主でのみ成長でき、高度な宿主特異性を示します
- 分子同定ではITSは種内変異が大きすぎるためnrLSUが用いられることもあります
サビキン綱(Pucciniomycetes)は担子菌門サビキン亜門に属する菌類で、サビキン亜門における最大の綱です。主に植物にさび病を引き起こす菌を含みます。かつてはウレディニオマイセス綱(Urediniomycetes)と呼ばれていましたが、2006年に現在の名称に変更されました。世界中に分布し、コムギ、ダイズ、トウモロコシ、コーヒーなど、重要な農作物に深刻な被害をもたらす病原菌を多く含んでいます。
サビキン綱は主に5つの目に分けられています。最大のグループであるサビキン目(Pucciniales)が種数の約90%を占め、その他によりマイナーな4つの目(後述)が含まれます。
最新の分子系統解析により、サビキン目は11の科(Mikronegeriaceae、Coleosporiaceae、Melampsoraceae、Phakopsoraceae、Phragmidiaceae、Pileolariaceae、Pucciniaceae、Pucciniastraceae、Raveneliaceae、Sphaerophragmiaceae、Uropyxidaceae)に再編成されました。従来の形態学的分類は必ずしも進化的関係を反映しておらず、特に熱帯性のさび菌では収斂進化による類似形態が多く見られることが判明しています。
全世界のiNat観察記録の約99%を占める最大のグループで、典型的な「さび病」を引き起こす菌類です。複雑な生活環を持ち、冬胞子→担子胞子→精子→さび胞子→夏胞子という5つの胞子段階を経ます(管理人の出身大学では植物系統分類学の講義でこれを覚えます…)。多くの種が異種寄生性で、マツやモミなどの主要宿主と、草本植物などの中間宿主を交互に利用します。
観察記録数が少ないグループで、主にコケや他の植物に寄生します。iNat観察記録のほぼ全てを単一の種、スイカズラの葉枯病菌であるインソリバシディウム・デフォルマンス(Insolibasidium deformans)が占めます。本目は横に隔壁を持つ管状のキクラゲ型担子器が特徴的で、コケなどの内部に菌糸の塊を形成します。代表的な属にはPlatygloea、Eocronartiumがあり、一部の種は腐生的な生活様式を持つ可能性があります。エオクロナルティウム・ムシコラ(Eocronartium muscicola)は関東の里山でもそれらしきものが見つかっています…!
観察記録はごく少ないですが、紫色の菌糸体という目立つ特徴を持つグループです。主に菌寄生菌として他の菌類に寄生し、粉末状の分生子を放出します。ヘリコバシディウム属(Helicobasidium)とトゥベルクリナ属(Tuberculina)は実は同一生物の有性・無性世代であることが知られています。
観察記録は少ないものの、カイガラムシとの共生関係という独特な生態を持つグループです。日本でもサクラなどの幹にモンパキン属(Septobasidium)がよく見られるのですが、きのこ観察会では地衣類や木の模様と勘違いされてスルーされているかも…?担子胞子が昆虫上で発芽し、吸器が昆虫体内に侵入してコイル状になります。多年生で明確な季節的反応を示し、湿潤期に成長し、乾燥期や寒冷期に休眠します。モンパキン属など6属が知られています。
iNat観察記録が全世界で1件も報告されていない謎多きグループです。植物に寄生し、単核の担子胞子を形成するという他のサビキン綱とは異なる特徴を持ちます。「microscala」と呼ばれる特殊な細胞小器官の構造を持つことも独特で、今後の研究が期待される分類群です。
サビキン綱の大部分は絶対寄生菌として、生きた宿主植物でのみ生長でき、人工培養は困難です。高度な宿主特異性を示し、特定の植物種または近縁種のみに感染する種が多く、宿主植物との共進化の歴史を反映しています。
地理的には世界中に分布し、様々な気候帯に適応しています。熱帯地域では休眠が不要なため、厚壁の冬胞子を形成しない種や生活環が単純化された種が多く見られます。温帯では季節的な宿主交代を行う種が一般的です。全然系統的に関係ない植物同士を行き来するのって、不思議な現象ですね…。
農業上極めて重要な病原菌を含み、コムギ黒さび病、コーヒーさび病、ダイズさび病など、世界の食料生産に深刻な影響を与える病害を引き起こします。一方で、自然生態系では植物の個体群動態や多様性維持に重要な役割を果たしています。
同定のポイント:何より宿主植物をしっかり同定できることが必要です!植物が好きな人は有利かも…!?最近は分子同定も強力な手法で、最新のRust HUBB(Herbarium-based Universal Barcode Blast)データベースには、120属1,150種以上のnrLSUバーコードが登録されており、同定に活用できます。また、胞子の形態観察では顕微鏡が必須ですが、冬胞子の隔壁数、夏胞子の発芽孔の位置、担子器の形態などが重要な識別形質となります。
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。