🗓️ 最終更新日: 2025-11-08
- 世界中に分布するフンタマカビ綱の一グループで、特に草食動物の糞上や材上で観察されます🌍
- 2細胞性の子嚢胞子が基本で、上部細胞は暗色、下部細胞は無色という特徴的な配色です🎨
- 子嚢果は綿毛状の毛や剛毛で覆われることが多く、黄色~黒色まで多様です
- 子嚢胞子には粘液質の付属物や発芽孔が見られることが多いです✨
- 子嚢は円筒形で長い柄を持ち、非アミロイド性の先端構造が特徴的です🔍
- 糞生の種が多いですが、木材腐朽性や土壌生の種も含む多様な生態を示します🍄
- 分子系統解析により2020年に科の範囲が大幅に見直され、複数の新科が設立されました📚
- 子嚢胞子の形態だけでは同定困難で、子嚢果殻壁の構造(膜質・革質・炭化)がより重要です
ラシオスフェリア科(Lasiosphaeriaceae)は子嚢菌門フンタマカビ目における最大級の菌類群で、iNaturalist観察記録も目内最多(約1,200件)です。上部が暗色・下部が無色という特徴的な2細胞胞子を持つ種が多く含まれます。草食動物の糞上に発生する糞生菌が特に多いですが、朽木や土壌など多様な環境に適応しています。2020年の分子系統解析により科の範囲が大幅に見直され、狭義のラシオスフェリア科として再定義されると同時に、複数の新科が設立されるという劇的な分類学的変遷を経験しました。
ラシオスフェリア科(Lasiosphaeriaceae)は子嚢菌門・フンタマカビ綱・フンタマカビ目に属します。1932年にNannfeldtによって設立され、2004年のHuhndorfらによる分子系統解析でフンタマカビ目はラシオスフェリア科(Lasiosphaeriaceae)、ケタマカビ科(Chaetomiaceae)、フンタマカビ科(Sordariaceae)の3科のみに再定義されました。
しかし2020年のMarin-Felixらによる包括的な多遺伝子座分子系統解析により、従来のラシオスフェリア科は側系統群であることが判明!現在は狭義のラシオスフェリア科として再定義され、同時にDiplogelasinosporaceae、Naviculisporaceae、Schizotheciaceaeの3新科が設立されました。重要な発見として、子嚢胞子の形態は収斂進化により極めて同形形質(ホモプラシー)的で系統予測には不適であり、子嚢果殻壁の構造の方がより有効な系統指標となることが示されました。
なお、さらにHuang et al. (2021) ではBombardiaceae、Lasiosphaeridaceae、Strattoniaceaeの3科が追加設立され、Bombardia、Bombardioidea、Apodospora、FimetariellaがBombardiaceaeに移されていますが、iNatの分類体系には執筆時点で未反映です。
本科の基準属で、世界中で広く分布し、日本でもL. ovinaが頻繁に観察されます。子嚢胞子は円筒形でS字状~湾曲し、単細胞性で無色なのが特徴。子嚢果表面は綿毛状または頸部に隔壁のある毛を覆われ、内容物は黄色を呈することが多いです。主に木質基質上に発生しますが、一部は糞生性。狭義のラシオスフェリア科のコアグループを形成します。
主に草食動物の糞上に発生する糞生菌。子嚢胞子は円筒形~蠕虫形で、両端に粘液質の尾状構造(caudae)を持つのが最大の特徴です。子嚢果殻壁は小区画状(areolate)のものがあり、炭化層を持つ種と膜質で半透明な種があります。抗菌・抗真菌活性を持つサーコフォリン類などの二次代謝産物を産生し、糞上での種間競争において重要な役割を果たしているといわれています。Huang et al. (2021) ではBombardiaceaeやNeoschizotheciaceaeに移されています。
単型属で、R. spermoidesのみが含まれます。子嚢果は直径僅か0.5 mmほどで、表面は平滑で光沢のある黒色。子嚢胞子は無色円筒形で直線的~弓状に屈曲し単細胞。粘液質の付属物を欠くのが特徴です。主に木材の切断面に大規模に群生します。
糞生性で、子嚢が4胞子性という珍しい特徴を持ちます。子嚢には非常に長い柄があり、子嚢胞子は大型で暗褐色、楕円形、厚壁で単細胞。頂端と基部に大きな発芽孔と幅広い粘液質鞘があります。新規抗真菌・抗菌活性を持つボンバルドリド類を産生します。Huang et al. (2021) ではBombardiaceaeに移されています。
子嚢胞子の上部細胞に隔壁を持つという重要な形質で識別されます。子嚢果は通常孔口を有し、膜質から革質。子嚢胞子には発芽孔または発芽溝を持ちます。主に糞生菌ですが、一部の種(Z. ebriosa)はワインコルク上に発生するという興味深い生態を示し、ワインセラーで古くから発見されていたようです。狭義のラシオスフェリア科内で、Lasiosphaeria属とは別のクレードを形成しますが、Huang et al. (2021) でも本科に残留しています。
ラシオスフェリア科の菌類は多様な生態を示しますが、腐生菌として知られており、特に糞生性の種が多いことが特徴です。本科の子嚢胞子には他の糞生菌と同様に暗色厚壁で耐久性のあるものや、粘質の付属物のような付着に適した構造を持つものが多く、草食動物による摂食を介して基質の糞に到達する巧妙な生活環を持っていると見られます。
一方、木材腐朽性の種(Lasiosphaeria、Ruzeniaなど)は腐朽材や植物遺体上に生育し、一部は淡水中の沈木にも発生します。
同定時の重要ポイント:科レベルの識別には2細胞胞子の色彩パターン(上部暗色・下部無色)が決定的です。属レベルでは、①子嚢果殻壁の微細構造(膜質/革質/炭化、textura angularis/intricata)、②胞子の隔壁の有無と位置、③粘液質付属物の形態、④生態(糞生/木材腐朽/土壌生)を総合的に評価します。ただし胞子形態は収斂進化により当てにならないことが多く、確実な同定には分子データの使用が推奨されます。
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。