🗓️ 最終更新日: 2025-11-01
- 6つの主要種群に分類され、病原性クレード・土壌生息種・樹皮甲虫共生種・菌寄生種など多様な生態を示します🌳
- 隔壁のある無色の菌糸からシンポジオ状の分生子柄が生じます🍄
- 分生子には2型があり、①分生子柄先端にロゼット状に配列する無色~褐色の分生子と、②菌糸側面に直接付着する褐色厚壁の分生子を形成します✨
- 温度による二型性を示す種が多く、25℃では菌糸型、37℃では「葉巻型」の酵母型に変化します🌡️
- コロニーは初め白色で、時間とともにクリーム色~暗褐色~黒色に変化し、「汚れた蝋」様の外観を呈します
- 2016年の分子系統解析によりOphiostoma属から分離され、現在50種ほどを含む単系統群として確立されています📊
- 形態だけでは同定困難で、正確な同定には分子データがほぼ必須です🔬
- iNaturalistではS. epigloea(シロキクラゲ寄生菌)が最も観察されており、刺状の独特の形態が目印です👀
スポロスリックス属(Sporothrix)はオフィオストマトイド菌類の一群で、約50種が知られています。最大の特徴は温度による二型性で、環境中(25℃)では菌糸型として、哺乳類体内(37℃)では酵母型として存在する種が多いことです。土壌や植物遺体に生息する腐生菌が大部分ですが、重要な人獣共通感染症の病原菌(S. schenckii複合種)、樹皮甲虫と共生する種、他の菌類に寄生する超特殊化した種(S. epigloea)など、驚くほど多様な生態を示します。
スポロスリックス属(Sporothrix)は子嚢菌門・フンタマカビ綱・オフィオストマ目(Ophiostomatales)・オフィオストマ科(Ophiostomataceae)に属します。基準種はSporothrix schenckiiで、1900年に記載されました。
属の分類学的位置づけは複雑な変遷を経ています。1世紀以上にわたり、多くのOphiostoma属の無性世代が本属として扱われてきましたが、2016年にde Beerらによる分子系統解析により、本属とOphiostoma属は系統的に明確に区別される別属であることが判明しました。この研究により26種がOphiostoma属から本属へ移管され、現在は堅固な単系統群として認識されています。
本属は分子系統解析により6つの主要種群に分類されます:①病原性クレード(S. schenckii複合種)、②S. pallida複合体、③S. candida複合体、④S. inflata複合体、⑤S. gossypina複合体、⑥S. stenoceras複合体です。同定にはCAL(カルモジュリン)遺伝子配列の決定が最も信頼性が高く、種レベル同定の標準とされています。
S. schenckiiを含む「病原性クレード」は本属で医学的に最も重要な種群で、スポロトリクム症(スポロトリコーシス、sporotrichosis)を引き起こす数種を含みます。スポロトリクム症が「rose handler's disease(バラを扱う人の疾患)」ともよばれる通り、ヒトに対しては皮膚の傷から感染することが最も多いです。狭義のS. schenckiiのほか、ブラジルでネコ媒介の大規模流行があったS. brasiliensisなどが含まれます。37℃で酵母型に転換する性質が病原性と相関しています。
iNaturalistで最も観察記録が多い種(約40件)で、極度に特殊化した菌寄生菌です。シロキクラゲ類(コガネニカワタケ、海外のシロキクラゲなど)のゼリー状子実体に発生します。子実体上に黒色刺状の子嚢殻を散生し、その様子は無精ひげが生えているよう…!宿主のGXM(グルクロノキシロマンナン)ゲル基質で生活環を完結できるという点が特殊で、最新のゲノム研究 (Allen et al., 2025) ではゲノムサイズが関連種中で最小、植物分解酵素やタンパク質分解酵素を大量喪失、ビオチン合成能の喪失、といった特殊化が起こっていることが明らかになりました。一方で、謎のAA14という酵素を新規獲得しており、GXM分解に関与する可能性があることから応用面でも期待されています
名前が示す通り、多孔菌類(ポリポア)の子実体に生息する種です。iNat観察記録は十数件程度で、北米とヨーロッパからS. epigloeaに次いで観察されています。長い孔口の先端から胞子を粘液として分泌し、昆虫によって胞子が散布されると考えられています。
スポロスリックス属は驚くほど多様な生態的ニッチに適応しており、土壌中の腐生菌から植物・動物の共生菌または寄生菌、さらには人獣の病原菌まで広範な生活様式を示します。主要な生息環境は土壌、腐植物質、ミズゴケ、植物体、木材、樹皮、動物の糞、菌類の子実体、哺乳類の生体など極めて多岐にわたります。
特に注目すべきは、同一属内にS. schenckiiのような医学的に重要な病原菌と、S. epigloeaのような特殊環境に高度に適応した菌寄生菌が共存することです。病原性の種は外傷または動物を介して感染します。
世界中に分布しますが、特に熱帯・亜熱帯地域で多様性が高く、病原性種は地理的固有性が顕著です(S. brasiliensisは南米、S. globosaはアジアに多いなど)。
実用的な同定の流れ:特殊な環境に生息する種は同定が容易ですが、それ以外は培養や分子系統解析が必要になります。病原性のある種を含むグループなので市民科学者が自宅で扱うことは推奨されませんが、専門的には①分生子の2型を顕微鏡で確認→②37℃での酵母型転換をテスト→③コロニーの色を観察(黒色になる種が多い)→④CAL遺伝子配列を決定するなどして同定します。その他スクロース・ラフィノース資化能なども重要です。
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。