🗓️ 最終更新日: 2025-05-25
イタチタケ属(Candolleomyces)は、2020年に多遺伝子系統解析によってナヨタケ属(Psathyrella)から独立した比較的新しい属です。最大の特徴は側シスチジアが完全に欠如していること。ナヨタケ属とは形態的に非常に類似しています。世界中に分布し、特にアジアで高い多様性を示しており、現在60種以上が認識されています。
イタチタケ属は担子菌門・ハラタケ目・ナヨタケ科に属します。2020年、Wächter & Melzerによる画期的な研究により、従来ナヨタケ属に含まれていた種群が、複数の遺伝子マーカーを用いた系統解析の結果、独立した系統群を形成することが判明しました。
この再分類により、ナヨタケ属は18のサブクレードに分割され、その一つとしてイタチタケ属が確立されました。系統的にはハウスクネヒティア属(Hausknechtia)とともに単系統群を形成しています。当初26種が移されましたが、その後の研究で続々と新種が発見され、現在は60種以上に拡大しています。特にアジア地域からの新種報告が相次いでおり、全体の約68%の種がアジアに分布しているという興味深い地理的パターンを示しています。しかし、iNatの全世界の観察記録もほぼ全てがイタチタケで、日本でも専らイタチタケのみが認識されています。
属の基準種で、世界中で最も普通に観察される種です。傘は1.5~5.5cm幅で、若いときは広円錐形、成熟すると凸形に変化。縁は波打ちで、若いときは縁に白い被膜の名残が垂れ下がります(これが同定に重要!)。傘の色は淡褐色~蜜色で乾燥すると退色。襞は他のナヨタケ属と同様の紫褐色。柄は傘の直径に対して細長いです。胞子は7-9×3.5-5μmの楕円形。道沿い、庭園、芝地などに散生~群生し、北半球の温帯域に広く分布。実は「複合種」とされ、形態的に類似した複数の隠蔽種を含む可能性が指摘されています。
イタチタケ属のきのこは全て腐生菌で、死んだ有機物を分解して生態系の物質循環に重要な役割を果たしています。生育環境は多様で、地上の腐植質に富んだ土壌、枯れた木材や切り株、埋もれた木片、まれに動物の糞上にも発生します。
地理的にはアジアで最も高い多様性を示し、約7割の種がアジアに分布。特に中国からの新種報告が相次いでいます。ヨーロッパには約18%の種が分布し、北米、アフリカ、南米における分布も報告されています。最近では海水環境に適応した種(C. halophilus、C. brunneovagabundus、C. albovagabundus)も発見され、マングローブ林や塩性湿地という特殊環境への適応も確認されています。
同定の決め手:かつてはナヨタケ属は容易に属レベルまで同定できましたが、イタチタケ属の存在によりそれが難しくなりました…。しかし、実際にはイタチタケ属の日本産種は今のところイタチタケにほぼ限られるので、イタチタケを除外さえすればナヨタケ属と同定できる、ということになります♪野外で最も注目すべきは、やはり草地に発生することと、傘縁の被膜の名残でしょう。しかし、被膜は脱落することもあり、ナヨタケ属の一部でも見られるなど確定的な識別形質ではないので、確実な同定には顕微鏡観察が必須です。まず側シスチジアを欠くことを確認し、次に縁シスチジアの形状、胞子のサイズと形を観察します。可能であればITS領域などの分子同定も有効です。特にイタチタケは複合種として今後整理される可能性が高いため、形態だけでなく分子データも重要になります。
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。