🗓️ 最終更新日: 2025-05-25
ハラタケ目(Agaricales)は担子菌門(Basidiomycota)最大の目で、私たちが「きのこ」と聞いて思い浮かべる、傘と柄を持つ形のものが多く含まれます。しかし分子系統学の発展により、見た目は全く違うホウキタケ型や腹菌型(ホコリタケ型)のきのこも実はこの仲間だとわかってきました。逆に、ハラタケ型でもベニタケ類やイグチ類は別の目に属することが判明し、「形だけでは分類できない」という面白さがあります。
ハラタケ目は担子菌門・真正担子菌亜門・ハラタケ綱・ハラタケ亜綱に属する単系統群です。2020年代の最新研究では、11の亜目(Agaricineae、Marasmiineae、Pluteineae、Tricholomatineae、Hygrophorineae、Clavariineae、Phyllotopsidineae、Pleurotineae、Sarcomyxineae、Schizophyllineae、Typhulineae)に分類されています。
歴史的にはElias Friesが1821-1832年にほぼ全ての襞を持つきのこをAgaricus属に分類したことから始まり、20世紀にはRolf Singerが肉眼的・顕微鏡的特徴を組み合わせて18科230属に再編成しました。しかし21世紀の分子系統解析により、形態に基づく従来の分類は大幅に見直されることになりました。
最も観察記録が多い亜目で、14の主要な科を含みます。ハラタケ科(Agaricaceae)のツクリタケ、ナヨタケ科(Psathyrellaceae)のヒトヨタケ類、フウセンタケ科(Cortinariaceae)、モエギタケ科(Strophariaceae)のシビレタケ属など、胞子が褐色〜黒色〜紫褐色の種が多く含まれます。一部は腹菌型(ホコリタケ類)も含む多様な形態を示します。
主にホウライタケ科(Marasmiaceae)からなり、小型で乾燥に強い種が多いのが特徴。ホウライタケ属(Marasmius)は「吸水復元性」と呼ばれる乾燥しても水を吸うと元通りになる性質を持ちます。シイタケ(Lentinula edodes)もこの亜目に含まれ、白色の胞子紋と硬い柄が特徴的です。
ウラベニガサ科(Pluteaceae)とテングタケ科(Amanitaceae)を含む重要な亜目。桃色の胞子紋と離生する襞(柄に接続しない)が共通の特徴です。Pluteus属は朽木上の腐生菌、Amanita属は基本的につばとつぼを持つ外生菌根菌で、シロタマゴテングタケなど猛毒種を含みます。
かつて「白色胞子を持つきのこ」の多くが含まれていましたが、分子系統解析で再定義されました。キシメジ科(Tricholomataceae)は現在7属に縮小され、マツタケ(Tricholoma matsutake)が代表種。イッポンシメジ科(Entolomataceae)は桃色の角ばった胞子が特徴で、湾入した襞を持つ種が多いです。
主にヌメリガサ科(Hygrophoraceae)からなり、蝋質の襞と鮮やかな色彩(赤・オレンジ・黄色)が特徴的。Hygrophorus属は外生菌根菌、Hygrocybe属は腐生菌で、後者はヨーロッパでは環境指標種として非耕作草地の質を評価するのに使われます。つばやつぼを欠く単純な形態のものが多いです。
ハラタケ目の生態は驚くほど多様で、あらゆる陸上生態系で重要な役割を果たしています。腐生菌として倒木や落葉を分解し物質循環を担い、外生菌根菌として樹木と共生し森林生態系を支え、時には昆虫や他の菌類に寄生することもあります。
生息環境も森林、草原、砂漠、都市公園から、なんと水中や動物の糞上まで!特殊な環境への適応例として、Psathyrella aquaticaは完全に水中で子実体を形成し、Psathyrella ammophilaは砂丘の海浜植物と共生します。シロアリと共生するオオシロアリタケ属菌は、アフリカやアジアで重要な食料源となっています。
実用的な同定の流れ:①まず襞の色(≒胞子の色)を確認(白色・桃色・褐色・紫褐色・黒色)→②襞の付き方をルーペで観察(離生・直生・湾入・垂生)→つばやつぼの有無をチェック→④生息環境と基質を記録(地上・朽木・糞など)→⑤可能なら顕微鏡で胞子の形状・サイズ・装飾を観察。この順序で観察すれば、少なくとも科レベルまでは絞り込めます!シスチジアや菌糸のクランプも重要な識別形質です。
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。