🗓️ 最終更新日: 2025-06-06
ヒメノガステル科は、分子系統解析によって大きく再編成された科の代表例です。もともとは地下生の腹菌類だけの科だと思われていましたが、実はハラタケ型のきのこも多く含まれることが判明!特に有名なのは幻覚性のシビレタケ属ですが、美しい橙色のチャツムタケ属、小さくて地味だけど時に猛毒のケコガサタケ属など、個性豊かな仲間たちが揃っています。
ヒメノガステル科は担子菌門・ハラタケ綱・ハラタケ目に属し、他の科の多くで特定の1-2属が大半の種を占める傾向があるのに対し、中規模~大規模な属が揃い踏みなのが興味深いところです。iNatで全世界の観察記録1万件超えの属は、多い順にチャツムタケ属、フミヅキタケ属、ケコガサタケ属、シビレタケ属、ワカフサタケ属、センボンイチメガサ属、Deconica属。いずれもそれなりに野外で見かけるきのこですが、特に関東の里山ではあちこちの倒木にチャツムタケ属菌が目立ちます。
分子系統解析の登場以降、最も劇的な変化の一つはシビレタケ属の分割です。2002年の研究で、従来のシビレタケ属が青変する幻覚性種と青変しない非幻覚性種の2つの系統に分かれることが判明。現在、青変する幻覚性種のみがシビレタケ属に残され、非幻覚性種はDeconica属として再分類されています。
中~大型で赤褐色から橙黄色の美しいきのこ。胞子紋は鮮やかな橙色~さび色で、これが最大の識別点!木材上(腐朽材や埋もれ木)に生育し、約200種のうち14種が幻覚性物質シロシビンを含有。胞子は装飾があり、成熟すると突起状や皺状、フラップ状になるのが顕微鏡的特徴です。有名な種は何といってもオオワライタケ。関東の里山ではハグロチャツムタケ(仮称)がたくさん見られます。
小~中型で褐色~黄褐色の地味なきのこですが、草地や有機物豊富な土壌、時に材上に発生。胞子紋はさび褐色。多くの種でつばまたは被膜の名残があるのが特徴。最もiNat観察記録の多い種はハタケキノコ、次いでフミヅキタケで、いずれも1万件超えです。ヤナギマツタケとツチナメコもかつてはこの属に含まれていましたが、現在はチャムクエタケ科のCyclocybe属に移されています。
小型で地味な褐色のきのこで、リトル・ブラウン・マッシュルーム(little brown mushroom)と総称される同定困難なグループの代表格。多くの種がコケと関連して生育する腐生菌で、胞子紋は黄褐色~肉桂色。観察記録最多の種はヒメアジロガサ。海外では、猛毒テングタケと同じアマトキシン類を含む、G. marginataなどの種が恐れられています。
小~中型で、幻覚性の種は傷つけると青変反応を示すのが最大の特徴。胞子紋は帯紫褐色~暗紫褐色。全て腐生菌で様々な有機物上に生育します。世界的にはミナミシビレタケが最も有名ですが、日本では所持・栽培が法律で禁止されており、「ご禁制きのこ」なんて言われることも…。
中型で白色~クリーム色~褐色の傘を持ち、多くの種で襞の縁が白色なのが特徴。全て外生菌根菌で様々な樹木と共生します。胞子紋は褐色。同定が極めて困難な属で、最近では人工知能を使った先進的なデータベース(hebeloma.org)まで開発されているほど!
ヒメノガステル科の生態は実に多様で、腐生菌から外生菌根菌まで様々な栄養摂取様式を示します。チャツムタケ属やシビレタケ属の多くは木材や有機物を分解する腐生菌として、フミヅキタケ属は草地や堆肥などの栄養豊富な環境で、ケコガサタケ属は主にコケと関連して生活しています。
特に興味深いのは外生菌根菌のワカフサタケ属で、マツ科、カバノキ科、ブナ科など広範囲の樹木と共生関係を形成。地下生のヒメノガステル属も様々な樹木と菌根を形成し、森林生態系で重要な役割を果たしています。
実用的な識別の流れ:地味な褐色系の傘と襞のきのこを見つけたら、本科のきのこを疑いましょう。①まず子実体のサイズと色をチェック→②生息環境と基質を確認(材上?草地?コケの間?)→③襞の微妙な色合いを観察(橙色ならチャツムタケ属、紫褐色ならシビレタケ属など)→④傷つけた時の青変反応の有無→⑤襞の縁の色など細部を観察。この手順で、多くは属レベルまでは絞り込めるはずです!
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。