🗓️ 最終更新日: 2025-07-23
ヒメカイメンタケ属(Coltriciella)は小型の硬質菌のグループです。最大の特徴は極めて小型で懸垂性の子実体。柄は側生することも中心生のこともあります。表面に装飾のある胞子も重要な特徴。属内で外生菌根菌と腐生菌の両方の生態を示し、栄養様式の進化的可塑性が注目されています。
ヒメカイメンタケ属は担子菌門・ハラタケ綱・タバコウロコタケ目(Hymenochaetales)・Coltriciaceaeに属します。系統的にも形態的にも、ニッケイタケ属と極めて近縁です。
最新の分子系統解析では、本属はニッケイタケ属とColtriciaceae内で単一のクレードを形成することが示されました。しかしC. australicaのような境界的な種の存在により、属の境界は不明瞭になりつつあります。近年の研究 (Valenzuela et al., 2020) では、属内で外生菌根菌と腐生菌の栄養様式が複数回独立に進化し、頻繁に切り替わっていたという推定結果が出ました。
本属の基準種で、日本にも分布する、最も普通に観察される種です。iNat観察記録は最多の約360件。子実体は小型で懸垂状、マツ科樹木の樹皮に付着し、特に空洞になった部分でぶら下がっていることが多いです。傘は円形で、剛毛に覆われ繊維状。柄も短く毛に覆われています。子実層面は管孔状で、傘の小ささと比較すると、孔口は相対的に超大型ともいえます。担子胞子は独特の装飾を持つのが特徴。形態的に類似した複数の隠蔽種が含まれている可能性があるといいます。
ヒメカイメンタケ属の菌類は、外生菌根菌と腐生菌という2つの栄養様式を示し、この形質は属内で複数回独立に進化したことが分子系統解析により明らかになりました。この栄養様式の柔軟性により、様々な環境条件下での生存が可能になっていると考えられます。
多くの種は主にマツ科樹木の樹皮上に懸垂状の子実体を形成しますが、C. multipileataのように土壌から直接発生する地上生の種も存在します。外生菌根菌として機能するものは宿主植物の根に菌根を形成し、腐生菌として機能するものは枯死材を分解します。
同定のコツ:日本の本属菌は今のところはヒメカイメンタケと同定しておいてよさそうです。日本のニッケイタケ属菌はどれもヒメカイメンタケよりかなり大型で、懸垂することもないので、混同のおそれは低いですが、属間の最も確実な識別形質は胞子の表面装飾です。本属の胞子は疣状や網目状の装飾を持つのに対し、ニッケイタケ属の胞子は平滑です。
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。