🗓️ 最終更新日: 2025-07-31
センベイタケ属(Coriolopsis)は、1905年にMurrillによって記載された木材腐朽菌の属です。最大の特徴は褐色の肉と骨格菌糸で、これが白色のシロアミタケ属との決定的な違い。世界中に分布しますが、種の多様性は熱帯・亜熱帯で最も高くなります。最新の分子系統解析により多系統群であることが判明し、既に属名が引用符付きで表記されていることもあります。分類学的再編が進行中の興味深いグループです。
センベイタケ属は担子菌門・ハラタケ綱・タマチョレイタケ目・タマチョレイタケ科(Polyporaceae)に属します。しかし最新の分子系統解析により、本属が多系統群であることが明らかになりました。
基準種のC. polyzonaはTrametes、Lenzites、Pycnoporusなどを含むトラメトイド・クレード(Trametoid clade)に属しますが、観察記録の多いカタシラガタケとウサギタケは互いに近縁でありながら、このクレードの外部に位置しています。これらの種は将来的にFunaliaあるいはTrametellaとして再分類される可能性が議論されています。本属に限らず、タマチョレイタケ目全体で再分類が進行中で、形態に基づく伝統的分類と分子データとの不一致が多くの属で見つかっています。
ヨーロッパから北米、アジアまで広く分布し、世界的には観察記録が最も多い種です(iNat観察記録約2,300件)。子実体は5-10cm幅、粗毛状で褐色〜灰褐色、同心円状の溝を持ちます。肉は褐色でコルク質、管孔は1-3個/mm。ニレやトネリコを好み、肥沃な土壌や石灰質土壌でよく見られます。
iNat観察記録第2位(約2,200件)の普通種。5-15cm幅で灰色がかった白色〜淡褐色。肉は淡褐色〜白色で、カタシラガタケより淡色。管孔は2-4個/mm。胞子は比較的大型。ポプラやヤナギに特異的に発生。耐熱性を持ち、高温環境でも生育可能で、リグニン分解酵素の生産能力が特に高いことが知られています。
主に熱帯・亜熱帯の広葉樹に発生しますが、関東の里山でも時に見られる種です。子実体は薄く平坦で扇形。和名のように、まさに煎餅のような形態をとることもありますが、変異も大きく、古くなったものはしっとりした「濡れ煎餅」になることも…。表面は短いビロード状で淡褐色〜灰褐色。管孔は4-6個/mmと小さく円形で、傷つけると色が濃くなるのが重要な特徴ですが、そのせいで同じ特徴のホウネンタケと紛らわしいことも。最新研究ではランの内生菌(エンドファイト)として種子の発芽を促進する機能も発見され(Yao et al., 2024)、単なる腐朽菌以上の生態的役割が注目されています。
日本を含む東アジア地域に分布する種。いわゆる南方系のきのこで、神奈川県内では真鶴半島でしか見られなかったものが、近年北方にぐんぐん分布を拡大しています。広葉樹の材に発生し、表面が黄金色〜褐色で平滑〜僅かにビロード状を帯びるのが特徴的。肉が黄褐色なのが特徴なので、断面も撮影しておきましょう。
センベイタケ属の全ての種は白色腐朽菌として、広葉樹の材や倒木のリグニンとセルロースを分解します。種によって明確な宿主選好性があり、カタシラガタケはニレやトネリコ、ウサギタケはポプラやヤナギを好みます。森林生態系における重要な分解者として、物質循環に大きく貢献しています。
特筆すべきは高いリグニン分解酵素(ラッカーゼ、マンガンペルオキシダーゼなど)の生産能力で、バイオレメディエーションへの応用が研究されています。ウサギタケの耐熱性やセンベイタケのラン科植物との共生関係など、種ごとに独特な生態学的特性を持ち、単なる腐朽菌を超えた多様な生態的役割が明らかになりつつあります。
実用的な同定のコツ:本属のようなしっかりとした肉質のサルノコシカケ類を見つけたら、まず肉の色をチェック!褐色なら本属の可能性大です。次に宿主樹種を確認し、ニレ・トネリコならカタシラガタケ、ポプラ・ヤナギならウサギタケを疑います。管孔の大きさと子実体の厚さも種の識別に重要。顕微鏡があれば、褐色の骨格菌糸と3菌糸型構造でより確信度が高まります。
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。