🗓️ 最終更新日: 2025-06-14
- 子嚢果は楕円形で、中央に縦方向の裂開部(スリット)があるのが最大の特徴です✨
- 子嚢胞子は糸状(針状)で無色、90-120μm程度の長さでゼラチン質の鞘に囲まれます🔍
- 多くの種は針葉上に黒色の帯線(zone lines)を形成し、これが野外での識別の手がかりに🌲
- 未熟な子嚢果は灰色ですが、成熟すると光沢のある黒色になります
- マツ科植物に特に多く見られ、宿主特異性が高い種が多いのが特徴です🍃
- エンドファイト・腐生菌・病原菌という3つの生活様式を状況に応じて変化させる種もいます
- 世界中に約145種が分布し、温帯針葉樹林を中心に様々な気候帯に生息しています🌏
カビフルイキン属(Lophodermium)は針葉樹を中心に世界中で約145種が知られている子嚢菌の一グループです。最大の特徴は楕円形で縦に裂ける子嚢果(子嚢殻)と、糸状(針状)の子嚢胞子を形成すること。多くの種はエンドファイトとして無症状で植物組織内に生息しますが、一部の種は重要な植物病原菌として葉ふるい病などの病害を引き起こします。
カビフルイキン属は子嚢菌門・チャワンタケ亜門・ズキンタケ綱・リティズマ目(Rhytismatales)・リティズマ科(Rhytismataceae)に属します。同じ科の主な属にはCoccomyces属、Rhytisma属がありますが、子嚢果あるいは子嚢胞子の形態により明確に区別可能です。
分子系統解析によると、カビフルイキン属はITS領域の配列解析でマツ類寄生種と南半球の他宿主寄生種の大きく2つのグループに分かれることが判明しています。興味深いことに、病原性を持つ種は系統樹上でより派生的な位置にあり、エンドファイトから病原菌へと進化したことが示唆されています。また、Meloderma desmazieresiiと同定された一部の菌株が本属内に位置づけられるなど(Ortiz-García et al., 2003)、属概念に再検討が必要な状況です。
複数のマツ属(Pinus)樹木に寄生する、全世界でのiNat観察記録が最多(約900件)の種。日本ではクロマツ、アカマツなど、ヨーロッパではヨーロッパアカマツなどの腐朽した針葉に普通に見られます。子嚢果は宿主の表皮組織内に埋生し、黒色で楕円形~広紡錘形の唇のような形状で、周囲に帯線を伴います。主に枯死した針葉上に発生し、エンドファイトとしても存在。長年L. seditiosumと混同され、葉ふるい病の病原菌とされていましたが、病原性は低いことが判明しています。
マツ類の重要な病原菌で、葉ふるい病を引き起こします。子嚢果は800-1500μmの長さで表皮組織内に完全に埋生。生きた針葉に感染し、黄色い斑点から赤褐色へと変化した後、針葉が落下します。以前はL. pinastriと混同されていましたが、分子生物学的手法により別種と判明しました。
ビャクシン属(Juniperus)の針葉上に発生する種。子嚢果は楕円形~長楕円形で、匍匐性の種で特に観察されやすいです。地表近くの湿度の高い環境を好み、主に腐生的に生育します。
クリ属(Castanea)やコナラ属(Quercus)など広葉樹の葉柄に生じる珍しい種。針葉樹に偏りがちな本属菌の中で、広葉樹に寄生する代表的な種として重要です。子嚢果の形態は他種と同様ですが、生息環境が明確に異なります。
カビフルイキン属菌は主に3つの生活様式を示します:①エンドファイト(内生菌)として宿主植物の生きた組織内に無症状で生息、②腐生菌として落葉・落枝上で枯死植物組織を分解、そして③一部の種は病原菌として植物病害を引き起こします。同一種でも宿主植物のストレス条件下ではエンドファイトから病原菌へと変化することが知られています。
宿主範囲はマツ科植物に集中していますが、ヒノキ科など他の針葉樹、あるいはイネ科植物や一部の広葉樹にも見られます。多くの種は単一の宿主属に限定される高い宿主特異性を示しますが、複数の宿主に感染する多犯性の種も存在します。エンドファイトとして生活する種は、宿主植物の生育促進、乾燥ストレスへの耐性付与、他の病原体からの保護など、様々な良い相互作用を持つことも知られています。
実用的な同定のコツ:まず宿主植物を特定し、針葉上の黒色の帯線を探します。次に楕円形~長紡錘形で縦に裂開する子嚢果を確認。L. pinastriとL. seditiosumの識別は形態だけでは困難です…。葉ふるい病の病徴(生きた針葉の黄変・落葉)が出ていたら記録しておいてください!確実な同定にはDNA解析が推奨されますが、属までの同定なら形態観察で十分可能です!
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。