🗓️ 最終更新日: 2025-05-26
- 顕微鏡で見ると菌糸にアンプル形の隔壁(ampullate septa)という特徴的な構造があり、これが本属の決定的な識別点です🔬
- 子実体は脆い質感で、背着生が基本ですが、珊瑚状・有柄傘状など想像以上に多様な形態を示します🍄
- 子実層面は種によって平滑・顆粒状・歯牙状・針状・管孔状と変化に富み、これが種の識別に重要です✨
- 多くは白色から淡色で、倒木や落枝に薄く広がるコウヤクタケ型のきのこです
- 1菌糸型(骨格・結合菌糸を持たない)が一般的で、菌糸にはクランプがあります
- 担子器は短め。担子胞子は平滑または装飾あり(疣状・刺状)で、種によって異なります🔍
- 木材腐朽菌として森林の物質循環に重要な役割を果たしています🌲
- トレキスポラ目(Trechisporales)の基準属で、全世界に多数の種が分布しています🌍
トレキスポラ属(Trechispora)は木材腐朽菌で、主に白色に近い背着生の薄い子実体を形成しますが、珊瑚状や傘状になる種も含まれる多様なグループです。最大の特徴は顕微鏡で見える「アンプル形隔壁」という膨らんだ隔壁構造。腐生菌と考えられてきましたが、近年は本属に外生菌根菌が含まれるとする研究もあります(Rosenthal et al., 2017)。
トレキスポラ属は担子菌門・ハラタケ綱・トレキスポラ目(Trechisporales)・ヒドノドン科(Hydnodontaceae)に属します。この目の起源は驚くべきことに三畳紀(約2億2400万年前)まで遡ると推定されており、恐竜時代から続く古い系統です。
分子系統解析により、かつて別属とされていたScytinopogon属(珊瑚状の熱帯種を含む)が本属に統合されました。興味深いことに、子実体形態の進化は有柄傘状(T. thelephoraのような)から背着生へと、つまり単純になる方向へと進化したことが示唆されています(Scott et al., 2010)。現在、トレキスポラ目にはヒドノドン科とシストトレマストラム科(Sistotremastraceae)の2科が含まれています。
本属で最も観察記録が多い種。管孔状(poroid)の子実層面が特徴的で、まるで小さな穴がたくさん開いているように見えます。白色で縁部に菌糸束を伴う子実体を形成し、担子胞子は球形から卵形(3.5-4 × 3-3.5 µm)。蓚酸カルシウムの結晶が菌糸や子実層下に蓄積するのも重要な識別点です。
淡黄褐色で、本属では珍しく有柄傘状の子実体を形成する種です。担子胞子は比較的大型(4-5 × 3.4-4.5 µm)。分子系統解析では、このような立体的な形態が祖先型である可能性が示されており、進化的に興味深い種です。熱帯から温帯に分布。
コウヤクタケ型で、穀粉状(farinaceous)から顆粒状の子実層面を持ちます。担子胞子は表面に装飾があるのが特徴。蓚酸カルシウム結晶も観察され、系統解析ではT. olivaceaと近縁関係にあることが分かっています。世界的に分布する普通種。
種小名の「nivea」は「雪のような」を意味し、白色から淡黄白色の美しい子実層面を持ちます。歯牙状(odontoid)の子実層面が特徴的で、小さな歯が並んでいるように見えます。T. fimbriataと近縁ですが、色調で区別できます。類球形~球形で疣状の担子胞子を持ちます。
トレキスポラ属の全ての種は木材腐朽菌として、森林生態系の物質循環において極めて重要な役割を果たしています。倒木や落枝を分解しており、ひっくり返すと湿った場所に子実体が広がっていることが多いです。興味深いことに、一部の種(T. thelephoraなど)は菌根形成能力も持ち、植物との共生関係を築くことができます。
分布は熱帯から温帯まで幅広く、特に熱帯・亜熱帯地域で高い多様性を示します。今後も新種の発見が期待されています。
同定の決め手:まず子実層面の形態(平滑・顆粒状・歯牙状・針状・管孔状)を確認し、顕微鏡でアンプル形隔壁の有無をチェック。この特徴的な隔壁があればトレキスポラ属で確定かも…?白色の繊細なコウヤクタケ類で胞子に装飾、といったら真っ先に考えるのはこの属。蓚酸カルシウムの結晶がないかどうかも確認しましょう!
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。