🗓️ 最終更新日: 2025-01-01
- 傘の形態は杯状・鞍状・浅裂状など多様で、種によって大きく異なります🍄
- 柄は円筒形で平滑や毛状、あるいは肋脈状で深い溝のあるものが多く、この特徴が重要な識別ポイントです✨
- 色は白・クリーム・灰色・黒色など様々で、新鮮時と乾燥時で変化することも🎨
- 子嚢胞子は楕円形で単一の大きな油滴を持つのが特徴的です💧
- 多くの種が外生菌根菌として特定の樹木と共生関係を築いています🌲
- クロノボリリュウの和名が当てられているH. lacunosaは、実は複数の隠蔽種を含むことが判明!🔍
- 子嚢基部の形態がアポリンカス(aporhynchous)型かプリューロリンカス(pleurorhynchous)型かで2亜属に分かれます📊
ノボリリュウ属(Helvella)は傘と柄を持つ種を多く含む大型子嚢菌のグループで、傘は杯状から鞍状、浅裂状まで多様な形状をとります。柄に肋脈状の隆起や彫刻刀で刻んだような深い溝を持つものが多く、色も白色~灰色~黒色と変化に富んでいます(一方、それ以外の色はほとんどない)。近年の分子系統解析により「隠蔽種」が多数発見され、分類体系の大幅な見直しが進んでいます。
ノボリリュウ属は子嚢菌門・チャワンタケ綱・チャワンタケ目・ノボリリュウ科(Helvellaceae)に属します。この科にはBalsamia属、Barssia属、Pindara属、Underwoodia属、Wynnella属なども含まれ、Wynnella属はHelvella属の姉妹群として位置づけられています。
最新の分子系統解析により、Helvella属は大きく2つの亜属に分かれるとされています:子嚢基部がアポリンカス型、つまり鉤形構造(crozier)を持たないLeucomelaenae亜属と、プリューロリンカス型、つまり基部が分岐し、鉤形構造を形成するHelvella亜属です。後者はさらにElasticae節、Helvella節、Lacunosae節の3つに細分されます。これらの分類は複数遺伝子に基づく分子系統解析により支持されました。
本属菌のうち、全世界でiNat観察記録最多の種(約9千件)。「ノボリリュウタケ」とよばれることも多いですが、ここでは日本産菌類集覧に従いました。白色~クリーム色の鞍状または不規則に浅裂状の傘と、皺のある肋脈状の柄を持つ代表的な種。全長6-13cm、傘の直径2-6cm。若い時の傘の縁は内巻きで、傘の下面は毛状。胞子は楕円形で平均19×11.5μm。主に広葉樹林、特にブナ科植物と外生菌根を形成します。世界的に分布し、日本でも普通種の一つです。
灰色~黒色の不規則な形の傘と溝のある柄を持ち、柄には肋脈状の隆起があります。胞子は楕円形で15.5-18×10.5-12.5μm、1つの油滴を持ちます。広葉樹と針葉樹の両方(カバノキ属、チョウノスケソウ属、ヤナギ属、ブナ属、コナラ属、リンゴ属など)と外生菌根を形成。やはり日本を含む広い地域に分布しますが、これからの分類で細分化される可能性大です…!
従来はクロノボリリュウと混同されていた北米西部の種。iNat観察記録はクロノボリリュウを圧倒的に追い抜いています(約7千 vs 約2千)。クロノボリリュウよりもやや大型で針葉樹林に特異的に発生します。主にマツ属、トウヒ属、モミ属などの針葉樹と外生菌根を形成。分子系統解析により独立種として認識されるようになりました。
北米西部のもう一つの隠蔽種で、傘と柄の色のコントラストが顕著なのが特徴。傘は非常に暗色で丸みがあり、若い時には明確な溝があります。主にオーク(コナラ属)林に特異的に発生します。
本属菌としては珍しく、発達過程を通じて杯状の子嚢盤を維持するのが最大の特徴で、柄には顕著な肋脈状の隆起(これが裏筋!)があります。子嚢はプリューロリンカス型で260-320×14-16μm、胞子は楕円形で17.4-20.8×11.0-13.2μm。側糸の先端は5-8μmに肥大し黄褐色を帯びます。広く分布する種。
若い時は杯状ですが、成熟すると浅裂状に開くのが特徴。柄は密な毛に覆われます。この属では珍しく紡錘形の胞子(20-26×9-12μm)を持ち、これが決定的な識別形質となります。アシボソノボリリュウ、クラガタノボリリュウと時に紛らわしいですが、それらはいずれも楕円形の胞子を持ちます。
ノボリリュウ属のきのこは主に北半球の温帯・寒帯地域に分布し、多くの種が外生菌根菌として様々な樹木と共生関係を築いています。森林(広葉樹林、針葉樹林、混交林)、草地、林道沿い、若い樹木の植栽地など多様な環境に生息し、湿潤な土壌や腐朽材上でも見られます。
種によって宿主特異性の程度は異なり、ノボリリュウは主にブナ科植物と、H. vespertinaは針葉樹と、H. dryophilaはオークと特異的に共生します。近年、中国から一度に18新種が記載され、さらに17種の未記載種の存在が示唆されるなど(Mao et al., 2023)、アジア地域の多様性の高さが注目されています。
実用的な同定の流れ:①まず子実体の基本形(杯状・鞍状・浅裂状)を確認。この時点でウラスジチャワンタケは確定できます。→②柄の特徴(肋脈状の隆起や毛、溝の有無)をチェック→③色の組み合わせ(傘と柄のコントラスト)を記録(同色のことも、異なることも)→④生息環境と近くの樹木を必ず確認→⑤可能なら顕微鏡で胞子の形とサイズを測定。現在も既に多くの種の同定が困難ですが、さらに難化が予想されます。おそらくDNAバーコーディングが必須になってくるでしょう…。
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。