🗓️ 最終更新日: 2025-06-04
- 樹木の表面に平坦な黒色のパッチ状子座を形成し、時に数メートルに達することもあります🌳
- 子座は初め白色~灰色で、成熟すると黒色になるのが特徴✨
- じっくり見ると表面に小さな点状のくぼみ(子嚢殻の開口部)が無数にあり、これが重要な識別点です🔍
- 健全な樹木に内生菌(エンドファイト)として潜伏し、宿主が乾燥などのストレスを受けると病原性を発揮するとされています⚡
- 子嚢胞子は褐色楕円形、特徴的な発芽溝を持ちます
- 無性生殖型は主にNodulisporium型で、全出芽型の分生子形成が特徴です
- KOHで色素が抽出されないため、近縁のアカコブタケ属(Hypoxylon)とは化学的に区別できます💡
- 全体的に宿主選好性が強く、種によってコナラ属・ブナ属・コルクガシなど特定の樹木と結びつきます🍃
クロイタタケ属(Biscogniauxia)は子嚢菌門の中でも特異な生活様式を持つ菌類です。健全な樹木には内生菌として無症状で潜伏していますが、種によっては宿主が弱ると急激に病原性を発揮し、樹皮に平坦で黒い巨大な子座を形成します。
クロイタタケ属は子嚢菌門(Ascomycota)・クロイボタケ綱(Sordariomycetes)・クロサイワイタケ目(Xylariales)・クロサイワイタケ科(Xylariaceae)に属します。Kuntzeが1891年に記載し、現在世界で50種以上が認識されています。関東地方では里山の雑木林で、倒木や丸太の樹皮を破って生えている様子が頻繁に見られます。日本産の種は「クロイタタケ」の和名がついているB. capnodesかもしれませんが、近年の研究がないので不明確です…。
本属は、以前はアカコブタケ属のApplanata節に含まれていましたが、現在は独立した属として再認識されています。分子系統解析では、本属はCamillea属と姉妹群を形成しました。両属とも二部構造(bipartite)の子座を持ち、KOH抽出可能な色素を欠くという共通の特徴があります。
北米で最も普通に見られる種で、主にコナラ属樹木(特にレッドオーク)に発生します。子実体は灰青色→白色→黒色と変化し、表面に特徴的な小さな黒い点状構造が多数見られます。子嚢胞子は25.5-30.2 × 13.2-15.3 μmで楕円形。ビスコグニオーキシア・キャンカーと呼ばれる樹病の原因菌として重要です。
ヨーロッパで一般的な種で、主にヨーロッパブナを宿主とします。黒色平坦で光沢のある子座と、僅かに乳頭状の子嚢殻孔口が特徴。ビーチ・タークラスト病(BTC)の原因菌として知られ、近年は針葉樹からも発見されています。気候変動により中欧へ分布域が拡大している可能性があります。
地中海地域でコルクガシに「チャコール・キャンカー(charcoal canker)」とよばれる深刻な病害を引き起こす重要な種。内樹皮と木部に広範な壊死を引き起こし、病名の通り、樹皮の外側に炭色の浸出液を伴うことが多いです。コルク産業に甚大な被害をもたらしています。
北米東部とヨーロッパにおいて広葉樹の枝や幹に発生する種で、樹皮を破って円形に近い子座が現れます。特徴的なNodulisporium型の無性世代を持ちます。コロニーと分生子柄の形態によって他種と区別されます。
クロイタタケ属は世界中の温帯から熱帯の森林に広く分布し、健全な樹木に内生菌として無症状で生息するため、樹木の「潜在的侵入者(latent invaders)」として知られています。実際に、健全な樹木の葉から本属菌の菌糸が分離されることが知られています。日本では今のところ病原菌としては知られていませんが、条件が揃うと急激に病原性を発揮するといいます。
各種は特定の宿主選好性を持つことが多く、B. atropunctataは主にコナラ属樹木、B. nummulariaはブナ、B. mediterraneaはコルクガシというように宿主選好性が高いです。最終的に宿主樹木の辺材を分解し、水分や栄養の輸送を妨げることで枝や幹に病害を引き起こします。
気候変動による乾燥ストレスの増加は、これらの菌類による森林被害の増大につながる可能性があり、特に地中海地域やヨーロッパ南部で被害の増加が報告されています。
同定の決め手:しばしば樹皮を破って現れる平坦で黒い巨大なパッチ状の子座が特徴です。ルーペで見ると子嚢殻の孔口が無数の小さな点状として観察されます。まずは宿主樹種の確認が大事です。顕微鏡観察では子嚢の先端リングがアミロイドであることを確かめ、子嚢胞子のサイズと色、発芽溝を確認することが重要です。類似のアカコブタケ属は子座に赤みを帯びることが多く、KOHで色素が抽出される点などで区別できます。同じく樹皮を破る平坦な黒色の子座を形成するシトネタケ属菌との判別に迷うことがありますが、それは子座が二部構造ではなく立体的に盛り上がり、本属菌のように灰色→黒色に変化することがなく、子嚢胞子の形態も全く異なります。
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。