🗓️ 最終更新日: 2025-05-30
- 子嚢菌門・フンタマカビ綱に属し、瓶形(フラスコ形)の子嚢殻を持つのが基本形です🍾
- 多くが黒色〜暗褐色の炭化したような子座(stromata)を形成し、枯死材上で目立ちます✨
- 子嚢胞子は褐色で片側に発芽溝を持つことが多く、重要な識別形質です🔍
- 子嚢の先端部はヨード反応陽性(J+)を示すことが多く、顕微鏡観察での確認ポイント💡
- 無性世代はnodulisporium型、geniculosporium型、libertella型など科により異なります📊
- KOH(10%水酸化カリウム)を滴下すると特徴的な色素が溶出し、特にアカコブタケ科で重要🎨
- 宿主特異性が高い種が多く、特定の植物にのみ発生する場合があります🌿
- 世界で22科164属を含む巨大な分類群で、特に熱帯・亜熱帯地域で多様性が高いです🌏
クロサイワイタケ目(Xylariales)は子嚢菌門最大級の目の一つで、主に枯死材上に黒色〜暗褐色の炭化したような子座を形成する菌類です。瓶状の子嚢殻を持ち、多くの種で子嚢胞子に特徴的な発芽溝が見られます。木材腐朽菌として森林生態系で重要な役割を果たす一方、内生菌や植物病原菌として働く種も含まれ、さらに二次代謝産物の生産源としても注目されています。
クロサイワイタケ目は子嚢菌門(Ascomycota)・フンタマカビ綱(Sordariomycetes)・クロサイワイタケ亜綱(Xylariomycetidae)に属する単系統群です。1932年にスウェーデンの菌学者、Nannfeldtによって記載されました。
2018年のWendtらによる大規模な分子系統解析により、科レベルの再編成が行われ、アカコブタケ科(Hypoxylaceae)の復活やグラフォストロマ科(Graphostromataceae)の拡大などが行われました。最新の知見では22科164属が含まれ、DNAデータに基づく解析によりアンフィスフェリア目(Amphisphaeriales)の姉妹群であることが確認されています。多くの大きな属(Xylaria、Diatrype、Eutypellaなど)は多系統群であることが判明し、今後さらなる再編が予想されます。
iNaturalistで約10万件の観察記録を誇る最大の科。33属以上を含み、特にクロサイワイタケ(マメザヤタケ)属(Xylaria)は全体の50%以上を占めます。黒色で炭化したような直立〜棒状の子座が特徴的で、子嚢胞子は褐色で舟形〜楕円形、片側に発芽溝を持ちます。多くは木材腐朽菌ですが、ヒメカサクギタケを含むPoronia属のように動物の糞上に特異的に発生する属も含まれます。
2018年に復活・改訂された科で、約5万6千件の観察記録があります。Hypoxylon属を中心に19属を含み、KOH処理で特徴的な色素を放出する子座が重要な識別形質。子座は半球形〜扁平で表面色が多様、子嚢胞子のペリスポアの装飾パターンとKOH可溶性も種同定に重要です。チャコブタケ属(Daldinia)は切断面が環紋をあらわす層構造を持つ球形の子座が特徴的。
主に広葉樹の腐朽材に生息し、約1万件の観察記録。シトネタケ属(Diatrype)を基準属とし、子嚢胞子はソーセージ形で無色〜淡色が特徴。Eutypa lataはブドウの病害、Eutypella parasiticaはカエデの潰瘍病を引き起こすなど重要な植物病原菌を含みます。分子系統解析で多くの属が多系統群であることが判明し、分類の再編が進行中です。
約7千件の観察記録があり、以前はニマイガワキン属(Graphostroma)のみの科でしたが、最新の系統解析によりクロイタタケ属(Biscogniauxia)、Camillea属などが移されました。2層構造の子座(bipartite stromata)を形成する属が多く、平坦な盤状の子座が特徴的。系統樹上ではxylarioidクレードの基部に位置し、進化的に興味深いグループです。
クロサイワイタケ目の菌類は、森林生態系において木材腐朽菌として重要な役割を果たしています。セルロースとリグニンを分解する能力により、倒木や枯死材の分解を通じて物質循環に貢献しています。特に熱帯・亜熱帯地域では高い多様性を示し、未知種が多数存在すると考えられています。
生態的には腐生菌が主体ですが、多くの種が内生菌(エンドファイト)として健全な植物組織内にも生息しています。これらは通常病原性を示さず、むしろ二次代謝産物を通じて宿主植物の生長を促進したり、他の病原菌から保護したりする有益な役割を果たす場合もあります。一方で、シトネタケ科の一部の種は経済的に重要な植物病原菌として知られ、潜伏感染後に宿主が衰弱した際に病徴を現し、シイタケ栽培の害菌としても知られています。
宿主選好性も重要な生態的特徴で、竹類に特化したEngleromyces属、動物の糞上に発生するPoronia属やHypocopra属、落果・落種上に特化した種など、様々な生態的ニッチに適応しています。チャコブタケ属の一部は火災後の環境に出現する先駆種としても知られています。
実用的な同定の流れ:①まず子座の形状と色を観察(直立型・座布団型・球形など)。断面も重要!→②KOH反応をチェック(特にアカコブタケ科)→③基質と宿主を記録→④顕微鏡で子嚢胞子の形態(色・形・発芽溝)と子嚢のヨード反応を確認→⑤可能なら無性世代の形態も観察(野外でも季節によってはしばしば目立ちます)。分子同定にはITS領域に加えてnrLSU、RPB2、TUB2などの複数遺伝子を用いることが推奨されます!
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
値が正に大きいほどその分類群に特徴的な形質、負に大きいほど他の分類群に特徴的な形質であることを示します。
エラーバーは95%信頼区間を示しています。観察数が少ないほど信頼区間が広くなります。