🗓️ 最終更新日: 2025-08-30
アケボノアワタケ属(Harrya)は2012年にHallingらによって新設された比較的新しい属で、イグチ科の中でも独自の系統を形成します。基準種のアケボノアワタケが日本で知られています。特徴的な桃色~ばら色の傘と鮮やかな黄色の柄基部の組み合わせから、難しいグループが多いイグチ類の中では比較的同定が容易です。○○アワタケという和名のきのこは他にもいくつかありますが、いずれも別属です。
アケボノアワタケ属は担子菌門・ハラタケ綱・イグチ目・イグチ科・Zangioideae亜科に属します。2012年の分子系統解析により、従来イグチ(ヤマドリタケ)属(Boletus)やヤマイグチ属(Leccinum)、ニガイグチ属(Tylopilus)に分類されていた種が独立した系統を形成することが判明し、このグループに対して本属が提唱されました。
2014年のWuらによる4遺伝子領域を用いた大規模解析で、イグチ科が7つの亜科レベルの主要クレードに分けられ、アケボノアワタケ属はZangioideae亜科に位置づけられました。系統的には中国のZangia属、オーストラリアのAustralopilus属、腹菌型のRoyoungia属などと姉妹群関係にあるとされています。
本属の基準種で最も普通種。iNat観察記録は属内で圧倒的に最多の約2,500件。北米東部、中米、東アジアなどに広く分布します。しばしば標高の高い地域の針葉樹林で見られる印象があります。和名の「曙」の由来にもなった桃色~ばら色の傘と、柄の桃色の小鱗片、鮮やかな黄色の柄基部の組み合わせが特徴的。断面の肉は白色で、柄基部では黄色です。広葉樹(カバノキ科、ブナ科)と針葉樹(マツ科)の両方と菌根を形成するとされる外生菌根菌です。
アケボノアワタケ属の全ての種は外生菌根性菌類で、森林環境において樹木と相利共生関係を形成します。樹木は光合成産物を菌類に提供し、菌類は土壌から水分や無機栄養素を吸収して植物に供給します。
アケボノアワタケは比較的広い宿主範囲を持つジェネラリストタイプで、針葉樹と広葉樹の両方と菌根を形成できます。主に夏季(北米では遅春から晩夏)に発生し、湿度の高い混交林や針広混交林の林床、特に落葉層の発達した場所に単生または散生します。セペドニウム (Sepedonium) とよばれる黄色いカビや、昆虫の幼虫(ハエやキノコバエ)による寄生を頻繁に受けることも知られています。
同定の決め手:アケボノアワタケの同定は、①桃色~ばら色の傘、②白色~桃色の管孔、③柄表面の桃~赤色の微細な鱗片、④鮮やかな黄色の柄基部、⑤切っても青変しない肉の5つの特徴の組み合わせを確認すれば確信度が高いです。顕微鏡があれば毛状被の傘表皮とデキストリノイドの胞子を確認。類似種のニガイグチ属には通常柄基部が黄色ではなく、ヤマイグチ属はより粗い鱗片を持ち、Zangia属は青変します。ミドリニガイグチにもしばしば類似しますが、柄に鱗片がないこと、傘がより緑色で傘肉が黄色であることなどで識別可能。ヌメリニガイグチも柄基部が黄色になることがありますが、柄の模様がやはり異なります。
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。