🗓️ 最終更新日: 2025-05-31
- 傘の裏側に襞ではなく管孔(チューブ状の構造)があり、スポンジ状に見えるのが最大の特徴です🍄
- 損傷すると青変・赤変・黒変などの変色反応を示す種が多く、これが重要な同定ポイント✨
- 多くの種は外生菌根菌として特定の樹木(ブナ科・カバノキ科・マツ科など)と共生関係を形成します🌲
- 柄表面の装飾が多様で、網目模様・鱗片・点状など属や種によって特徴的なパターンを示します🔍
- 胞子紋の色はオリーブ褐色・褐色・桃色・黒褐色など多様で、属レベルの識別に役立ちます🎨
- 傘表面は粘性・乾燥・ひび割れ・鱗片状など変化に富み、属や種の重要な識別形質です
- 子実体は一般的に肉厚で頑丈な構造を持ち、食用として高い価値を持つ種も多く含まれます🍽️
- 分子系統解析により7つの主要な亜科に分類され、従来の形態分類とは異なる系統関係が判明しました💡
イグチ科(Boletaceae)は、傘の裏側に襞ではなく管孔を持つきのこの一大グループです。この管孔層はスポンジのように見え、無数の小さな穴(孔口)から胞子を放出します。多くの種が樹木と外生菌根を形成し、森林生態系で重要な役割を果たしています。ヤマドリタケ(ポルチーニ)をはじめとする高級食用きのこも含まれ、世界中できのこ狩りの対象となっています。
イグチ科は担子菌門(Basidiomycota)・ハラタケ綱(Agaricomycetes)・イグチ目(Boletales)・ボレタス亜目(Boletineae)に属します。1826年にフランスの植物学者シュヴァリエによってハラタケ科とは別の科として初めて記載されました。
近年の分子系統解析により、従来の形態に基づく分類が大きく見直されています。特にWu et al. (2014)の包括的研究では、7つの亜科レベルのクレードが特定され、ヤシャイグチ亜科(Austroboletoideae)、イグチ亜科(Boletoideae)、ヤマイグチ亜科(Leccinoideae)などが設立されました。また、従来の大きな属(Boletus、Leccinum、Xerocomus)は多系統であることが判明し、多数の新属が記載されています。
大型で肉厚な子実体を形成し、ヤマドリタケモドキやムラサキヤマドリタケのように柄に顕著な網目模様を持つ種が多いのが特徴です。傘表面は滑らかで時に粘性があり、管孔は白色から黄色、成熟すると黄褐色~オリーブ褐色になります。ブナ科の樹木と菌根共生することが多く、日本でも高標高地域で見られることのあるヤマドリタケは「ポルチーニ」として世界的に有名な高級食用きのこです。
柄表面に小さく硬い腺点とよばれる装飾があるのが最大の特徴で、これらは通常褐色~黒色です。柄は傘の直径より長く細長いことが多く、切断すると肉が変色(青色、赤色など)します。あまり関東の里山では見られませんが(よく見るスミゾメヤマイグチは別属のLeccinellum属)、標高を上げれば遭遇率は高くなります。カバノキ科やブナ科の特定の樹種と強い共生関係を持ち、ヤマイグチが代表種です。
小型~中型の子実体で、傘表面が乾燥すると微細にひび割れるのが特徴です。関東の里山でも、また全世界でも最も一般的な種であるキッコウアワタケはその名の通り亀甲模様の傘を持ちます。管孔は他のイグチ科に比べて比較的大きく、柄への付着部は深く陥入する傾向があります。損傷すると青変する種が多く、従来のXerocomus属は多系統であることが判明し、Xerocomellus属などに再分類されています。クロアザアワタケはBoletus属、アケボノアワタケはHarrya属へ…。
管孔表面が白色から淡紅色~淡褐色で、胞子紋が桃色~茶色なのが特徴です。多くの種は味が苦いことで知られ(ただし全てではない)、これが属名の由来となっています。柄は中央部が太いものが多く、ニガイグチが代表種です。関東の里山ではブドウニガイグチ、オクヤマニガイグチ、ニガイグチモドキ…っぽいものが見られますが、似ているものや種内変異も多く、あまり自信を持って同定できないのが現状です。
傘表面に粘性があり、管孔表面は鮮やかな黄色~金色を呈するのが特徴です。柄は比較的細長く、中央部がやや膨らむものもあります。ハナガサイグチ、アキノアシナガイグチ、オオキノボリイグチ、セイタカイグチなどの個性派を含む華々しいグループです。分子系統学的研究により属内で多数のクレードが特定され、特に中国で高い多様性が報告されています。
傘と柄が灰色~黒色の鱗片で覆われ、まるで松ぼっくりのような外観を呈します。切断すると肉は最初に桃色~橙色に変色し、徐々に黒くなるのが特徴的。胞子は類球形で網目模様や刺状の装飾を持ち、従来は少数の種とされていましたが、分子解析では多数の隠蔽種の存在が示唆されています。以前の調査では同所的に生えていたほぼ形態的に区別がつかないオニイグチ属菌が、DNAで調べるといくつもの種からなることが判明した、ということもあり、属が一瞬で特定できるのに対して、種同定は激ムズです!
イグチ科のきのこは主に外生菌根性菌類として、特定の樹木と密接な共生関係を形成しています。ブナ科(ナラ・カシ・ブナ・クリ)、カバノキ科(カバノキ・ハンノキ)、マツ科(マツ・トウヒ・モミ)などが主要な共生パートナーです。この共生により、きのこは樹木から炭水化物を得る代わりに、土壌中の水分や養分の吸収を助けています。
一部の祖先的なグループ(ザイモクイグチ属[Buchwaldoboletus]やPseudoboletus属など)は腐生性または寄生性を示し、コショウイグチ属(Chalciporus)の一部は他の菌類に対して菌寄生的な関係を持つ可能性があります。南極を除く全ての大陸に分布し、北半球の温帯地域で最もよく知られていますが、熱帯地域でも高い多様性が報告されています。
実用的な同定の流れ:①まず管孔の有無を確認(襞ではなくスポンジ状)→②損傷時の変色反応をチェック(青変・赤変・黒変など)…特に断面の経時的な写真が重要…!最近はスマホで動画も簡単に残せますね!→③柄の表面装飾を観察(網目模様・鱗片・点状など)→④生育環境と宿主樹種を記録→⑤可能なら胞子紋の色を確認。この順序で観察すれば、属レベルまではかなりの確度で絞り込めるかも!顕微鏡があれば胞子の形状や装飾も重要な手がかりになります。
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。