🗓️ 最終更新日: 2025-06-11
ニガイグチ属(Tylopilus)はイグチ科に属する大型のきのこであり、その和名の通り、多くの種が強烈な苦味を持つことで知られています。特にニガイグチモドキは最強の苦味といわれることも…。傘の裏側は襞ではなく管孔で、胞子紋が桃色〜赤褐色なのがイグチ類の中でも際立った特徴です。一見ヤマドリタケ属(Boletus)に似ていますが、管孔が桃色を帯びることと、柄の網目模様が暗褐色であることなどで区別できます。世界的に広く分布し、主に樹木と菌根共生して生活しています。
ニガイグチ属(Tylopilus)は担子菌門・ハラタケ綱・イグチ目・イグチ科に属します。属の基準種はニガイグチ(T. felleus)。当初はヤマドリタケ属に含まれていた種が独立したものです。
最新の分子系統解析により、従来の形態に基づく広義の本属は多系統群であることが判明し、現在は11の異なる系統に分かれています。狭義のTylopilus属はイグチ科のBoletoideae亜科に位置づけられ、Austroboletus、Harrya、Pseudoaustroboletus、Veloporphyrellusなどの新属が分離・独立しました。
属の基準種で、ヨーロッパでは本属の数少ない種の一つです。全世界のiNat観察記録数は属内最多で約8,600件。非常に強い苦味が特徴で、傘は黄褐色〜灰桃色、直径4-15cm(北米では30cmに達することも!)。柄の暗褐色の網目模様がヤマドリタケとの重要な識別点です。胞子は11-17×3-5μmで紡錘形。広葉樹・針葉樹林に生育し、特にブナやオーク林に多く見られます。
幼時鮮やかな赤橙色の傘が非常に目立つ種で、米国南東部を中心に分布。傘は和名の通り黄色系で直径3-12cm、成熟すると褐色に退色します。肉はクリーム色で傷つけると褐色に変色します。柄は2.5-10cmで、先端付近に微細な網目模様があることも。興味深いことに、和名に「ニガイグチ」とついていても実際には苦くない種類の一つです。
暗色〜黒色のビロード状の傘が特徴的。肉は白色で傷つけても変色が少なく、桃色の管孔を持ちます。北米の広葉樹林に生息し、日本ではクロニガイグチとともに黒いニガイグチの一つです。しばしばクロニガイグチよりもサイズが小さいこともあり、変色性で区別されていますが紛らわしいことも多いです。驚くべきことに、ニガイグチ属では珍しく食用として良好とされていますが、しばしば見過ごされがちです。
北米東部から大量の観察記録がある種ですが(属内2位)、日本からは知られていません。ただ、韓国からの記録はあるのでもしかしたら分布しているかも…?若い時の鮮やかな紫色の傘が特徴的で、成熟するとチョコレート色に変化します。傘は直径最大15cm、表面に白っぽい霜状の膜があることが多いです。柄は紫褐色で白い大理石模様が入ることも。胞子は9.1-12.3×3.4-4.5μm。主にオークやブナと菌根共生し、砂質土壌を好みます。子実体からはチロピオールという特殊な化合物が発見されています。
傘は半球形から凸形で褐色系。管孔、柄、肉を傷つけるといずれも帯桃褐色〜褐色に変色します。柄の上からの2/3に網目模様があります。胞子紋は肉桂褐色で、他の多くのニガイグチ属とはやや異なる色調を示します。
ニガイグチ属のきのこは外生菌根菌で、樹木の根と共生関係を形成しています。菌糸が樹木の細根を包み込み、樹木から炭水化物を得る代わりに、土壌からの水分や無機養分の吸収を助けています。この相利共生は森林生態系の維持に不可欠です。
主な宿主植物はブナ科の広葉樹(オーク、ブナ、コナラ、クヌギなど)ですが、一部の種は針葉樹(マツ科)とも共生します。地理的には、ヨーロッパではほぼニガイグチのみが分布するのに対し、北米では多数の種が見られ、特に東部で多様性が高くなっています。東アジアと東南アジアも重要な多様性の中心で、桃色の管孔と平滑な胞子を持つ種が多数報告されています。関東の里山でもオクヤマニガイグチ、フモトニガイグチ、ニガイグチモドキ、ブドウニガイグチなど多数の種が見られますが、同定が難しいことも多いです…。きっと未知種もたくさんあるのだと思います。
フィールドでの同定のコツ:大型のイグチを見つけたら、①まず管孔の色をチェック(桃色ならニガイグチ属の可能性大)→②柄の網目模様の色と範囲を確認(暗色ならニガイグチかも)→③少量を噛んで苦味の有無を確認(苦味の強さも種によって異なります。飲み込まないこと!)→④傷つけた際の変色反応をしっかり観察→⑤周囲の樹木を確認(ブナ科が多い)。この手順で観察すれば、少なくとも属レベルまでは絞り込めます!
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。