🗓️ 最終更新日: 2025-05-31
- 若い子実体では傘と柄を結ぶクモの巣状の被膜(コルチナ)が特徴的で、成熟すると柄にさび褐色の帯として残ります🕸️
- 胞子紋は赤褐色~さび褐色で、成熟した襞もこの色に変わるのが決定的な識別点です🎨
- 世界最大級の担子菌類の属で、約2,000種以上が報告され、形態は極めて多様です🌍
- ほぼ全ての種が外生菌根菌として針葉樹や広葉樹と共生関係を形成します🌲
- 傘と柄の粘性の有無で亜属レベルの絞り込みが可能(両方粘性→Myxacium亜属、傘のみ→Phlegmacium亜属)💧
- 紫色、青色、赤色、黄色など鮮やかな色彩を持つ種が多く、色素の種類が分類の手がかりになります✨
- 猛毒成分のオレラニンを含む致命的な毒きのこが存在します⚠️
- 2022年の提案では10属への分割が示されましたが、時期尚早との反論も📚
フウセンタケ属(Cortinarius)は担子菌門最大級の属で、その名の通り若い子実体に見られるクモの巣状の被膜(コルチナ)が最大の特徴です。世界中で約2,000種以上が知られ、紫や青、赤、黄色など驚くほど多彩な色彩を持つ種が含まれます。ほぼ全ての種が樹木と外生菌根を形成し、森林生態系で重要な役割を果たしています。分類学的には大きな転換期にあり、「巨大な猛獣」と呼ばれるこの属をどう整理するか、研究者たちの挑戦が続いています。
フウセンタケ属は担子菌門・ハラタケ綱・ハラタケ目・フウセンタケ科に属します。長年にわたりフウセンタケ科唯一の巨大属として扱われてきましたが、最新の分子系統学的研究により大きな変革期を迎えています。
2022年、Liimatainenらは「Taming the beast(猛獣を飼いならす)」と題した研究により、ゲノムスケールのデータに基づき、従来のフウセンタケ属を科レベルに引き上げ、10の属に分割する画期的な提案をしました。しかし、2024年のGallone et al.による再解析では、分子系統解析の結果が問題視され、現時点での分割は時期尚早との見解が示されています。伝統的な9つの亜属(Myxacium、Phlegmacium、Telamonia、Dermocybe、Cortinarius、Leprocybe、Iodolentes、Paramyxacium、Orellani)も多系統群であることが判明し、約30の系統群が認識されていますが、高次分類は未だ流動的です。
北米で最も観察される種の一つ。傘は紫色~ラベンダー色で粘性が強く、成熟すると黄色い斑点が現れます。直径2-6cm。襞は若い時は紫色で、成熟するとさび褐色に変化。カシなどの広葉樹と菌根共生し、湿った森林環境を好みます。よく似たC. iodeoidesとの区別には、傘の粘液の味(C. iodeoidesは苦味)と胞子サイズが重要です。
フウセンタケ属の基準種で、全体が深い紫色~青紫色(時に黒っぽく見える)の大型種。傘は最大12cmに達し、表面は繊維質で乾燥。属内では珍しくシスチジアが顕著なのも特徴。北半球に広く分布し、ブナなどの広葉樹や針葉樹と菌根共生。広葉樹型と針葉樹型で胞子の形が異なりますが、遺伝的差異は確認されていません。
かつてRozitesという別属に分類されていた特異な種。傘は黄土色~淡褐色でしわがあり、直径5-15cm。最大の特徴は柄に膜質のつばを持つこと(他のフウセンタケ属では極めて稀)。北ヨーロッパと北米に分布し、針葉樹や広葉樹と菌根共生。日本を含む一部地域では食用とされますが、重金属を蓄積する傾向があるといいます。
襞が鮮やかな血赤色なのに対し、傘は黄褐色~橙褐色という対照的な色彩が特徴。学名の「semisanguineus(半分血のような)」は、まさにこの半分だけ赤い特徴を表現。英名の「surprise webcap」もその見た目に対する驚きを表現したものです。主に針葉樹林に発生し、北半球に広く分布。天然染料として利用され、他のフウセンタケ属に対して拮抗作用を示すことが生態学的研究で明らかになっています。
淡紫色~藤色の優美な色彩を持ち、傘の中心部はより白っぽくなります。絹状の繊維質で、襞は初め紫色を帯び成熟するとさび色に変化。種小名「alboviolaceus」は「白と紫」を意味し、その特徴的な色彩を表現。欧州では主にブナ林、北米では針葉樹林にも見られます。C. camphoratusに似ますが、後者は腐ったジャガイモのような強い臭いで区別できます。色や雰囲気が若干似ているので、全然別のグループのムラサキシメジと混同されている事例がかなりありそうです…。
フウセンタケ属のほぼ全ての種は外生菌根菌として、マツ、モミ、トウヒなどの針葉樹、またはブナ、カシ、シラカンバなどの広葉樹と共生関係を形成します。この菌根共生により、樹木への栄養供給と引き換えに光合成産物を得て、森林生態系の健全性維持に重要な役割を果たしています。
特定の樹種とのみ共生する種もあれば、広範囲の樹種と共生できる種もあり、その選択性は様々です。発生は主に夏季から秋季で、温帯から寒帯の森林に広く分布。一部の種は石灰質土壌や酸性土壌など、特定の土壌条件を好みます。関東地方の里山では散発的に紫色のフウセンタケが見つかることがあり、千葉県の一部ではオニフウセンタケも見られますが、多様性は圧倒的に亜高山帯の方が高いです。
実用的な同定の流れ:①まずコルチナまたはその痕跡(柄のさび褐色の帯)を確認→②胞子紋がさび褐色であることを確認(または成熟した襞の色)→③傘と柄の粘性をチェック(両方粘性=Myxacium亜属、傘のみ=Phlegmacium亜属、両方乾燥=その他)→④色彩パターン(紫・青・赤・黄など)と吸湿性の有無を観察→⑤臭い(ヨード臭、腐敗臭など)を確認→⑥共生樹種と生育環境を記録。ただし種レベルの同定には顕微鏡観察が不可欠で、胞子の装飾や傘表皮構造の確認が必要です。DNAバーコーディングは他のきのこと同様に強力な手法ですが、日本のフウセンタケ属の多様性はまだ十分に明らかになっていないので、参照配列不足から同定は難しそうです…。
各形質の対数尤度比(log positive likelihood ratio)を示しています。
緑色のカード:その分類群に特徴的な形質
オレンジ色のカード:他の分類群に特徴的な形質
グレーのカード:統計的に有意でない(95% CIが0をまたぐ)
信頼区間(CI)は95%信頼区間を示しています。CI下限が0を超える場合、統計的に有意な正の関連があることを示します。